花火の製造を行なう作業工室は、それぞれの作業ごとに別れています。先に書きましたが、その別れている各工室間の保安距離が決められており、万一爆発等の災害が発生しても隣の工室には延焼しないような構造になっているのです。工室は「配合工室」「星掛け工室」「玉込め工室」「玉貼り工室」「仕掛準備工室」などがあり、それぞれ単独で建築されています。工室の近くには「日乾場」と呼ばれる玉などを乾燥させる専用の場所が設けられています。

写真は「3連棟玉貼り工室」ですが、工室間の壁は20cmもの鉄筋コンクリート作りで頑丈にできています。これも万一のときに隣に被害を及ぼさない為です。また、各工室には中で作業ができる人数(定員)が決められています。玉込め工室であれば2名とか、玉貼り工室は3名などです。ずべて万一の時に被害を最小限に押さえる為の法律です。この工室の後ろが民家のある方向ですが、工室の後ろの壁は当然分厚いコンクリートです。さらにこの工場では、工室の後ろに「土堤(どてい)」と呼ばれる土による壁を作っています。一般の人に災害が及ぶ事を引き起こさない為の措置です。

花火工場は工場の外に対して随分気を使っていますが、中の花火師や従業員の皆さんにはどーなのか?というと、もちろん事故を起こさない様に色々な注意をしています。しかし、事故を最小限にとどめる為に「万一の場合はやむ負えない」という事になります。花火師は皆、口には出しませんがこの現実を心に秘めて日々の仕事に汗しています。この事だけ考えると、「花火師ってなんか悲しい仕事」と思います。なぜ花火師はそんな状況でかたくなに花火を作るのでしょうか。自分の生死をかけてなぜ花火をつくるのか。死んでしまえば全て終わりなのに。お金を沢山稼ぐ為?かっこいい所を誰かに見せたい為?名声を残したいの?

全てに「No」です。もちろん安全を確保する、工場を良くするのにもお金も必要ですし、お金は沢山あった方が良いでしょう。でも自分の死をとことん見つめた花火師は知っています。お金も名声も死んだらあの世に持っていけない事を・・・。花火師は花火を作る時に、花火が打ち上がり大空で大輪の花が咲く、その時だけを想像しています。その花火をみて一人でも二人でも誰かが喜んでくれたら良いのです。もしだれも見てくれないとしても、花火師は自分の花火を打ち上げられる事だけでも幸せになれるのです。これは日頃から花火の製造や打上準備で感じてきた色々なプレッシャーの開放なのです。自らの人生の証なのです。


花火作業工室の入り口にこんなものがついていました。銅板みたいな物にコードがついてコンクリートの中に消えています。実はこれは、作業する人が 工室に入る前に必ず手をつけて体中の静電気を取り除くものなのです。人は服を着て動くと必ず体内に静電気を発生、蓄積します。花火の製造作業をし ていて、何かの拍子に放電したりすると大変です。その為に工室に入る前に体中の静電気を放電してしまうのです。花火製造に関わる人は、化繊の服は 着用しません。静電気が発生しやすい為で、木綿の服を着用するようになっています。

また、工室の中は大抵板の間になっていますが、鉄くぎや鉄類は 表面にでていません。これも静電気対策です。冬場の湿度の低い時は、静電気が発生しやすいので、花火師は気持ちまでもがピリピリしています。当然静 電気に危険な作業は取りやめとなります。






工場のちょうど真中に大きな池があります。大きなコイ(黒いヤツ)も泳いでいました。花火屋さんは、優雅だな。と思っていると、写真の中の 黄色い看板が目に止まりました。なんと「防火用水]だったのです。大きな池が防火用水とは驚きましたが、工場に随分近い、いや真中です。工 場で爆発があった時には恐くて近寄れません。これは工場内の防火用水で、工場の入り口にもう一つあるという事でした。

さらにこの池は防火用 水に使用するだけでなくて、万一事故の際に工場で働く人の最後の避難場所でもあるのです。逃げ場がなくなった時に最後はこの池に飛び込むので す。他にも各工室の側には、ドラムカン大のコンクリート製の水槽が、水を一杯にして設置してあります。これも最後の逃げ場になるのです。 花火師はそこまでして、花火を作るのです。





花火工場の一番奥まった所に、ブロック塀に囲まれた物々しい建物が幾つか立っています。その内の一つが写真です(事情により外からの写真です)。建物の前面がコンクリートで覆われ、その建物の周りを再度ブロック塀で囲っています。これが花火工場の命とも言うべき「火薬庫」なのです。中には精根込めて作った花火玉が沢山入っているのです。工場の人が、鉄の頑丈な2重の扉を開けると、突然事務所の方でサイレンの音が鳴り出しました。火薬庫の警報機が扉が開くのを関知して、事務所のサイレンが鳴ったのです。すぐにサイレンはやみましたが、この工場では、安易に警報機の電源を切らないのです。普通は、火薬庫を開ける前に事務所に連絡して、電源を切ってもらいますが、時々警報機の検査をかねて鳴らすのです。


火薬庫の中は電灯もなく、窓もなく入り口の光だけです。花火玉の入ったダンボール箱が整然とならんでいます。火薬庫は火薬類の保管をする所ですので、一番気を使うのが盗難です。盗難にたいしては、非常に頑丈に対策されています。ここでは詳しい説明は記載できませんが、花火工場にはあまり似つかない(花火屋さん失礼)近代的な保安設備になっています。まず火薬類を火薬庫から盗み出す事は無理です。


そんな設備なので、火薬庫を1棟建設するにも大変な金額が必要です。おおよそ、中がカラッポの火薬庫1棟で小さな普通の家が1軒立てられるくらいでしょう。中に入れる事のできる火薬量はなんと2tと言う事でした。それを聞いてすぐに火薬庫を退散しました。




以上で花火工場の見学を終わりますが、まだ他にも花火工場には、変わったものがいっぱいあります。また次の機会にご案内できるでしょう。


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